「かりに俺が人生を信じないで、愛する女性にも幻滅し、世の中の秩序に幻滅し、それどころか、すべては無秩序な呪わしい、おそらくは悪魔的な混沌なのだと確信して、たとえ人間的な幻滅のあらゆる恐ろしさに打ちのめされたとしても、それでもやはり生きていきたいし、いったんこの大杯に口をつけた以上、すっかり飲み干すまでは口を離すものか! こう言い聞かせていたのさ。もっとも、三十までにはたとえすっかり飲み干さぬうちでも、きっと大杯を放りだして、立ち去るだろうよ……どこへかは、わからないがね。でも、ちゃんとわかっているんだ、三十までは、どんな幻滅にも、人生に対するどんな嫌悪にも、俺の若さが打ち克つだろうよ。俺は自分に何度も問いかけてみた。俺の内部のこの狂おしい、不謹慎とさえ言えるかもしれぬような人生への渇望を打ち負かすほどの絶望が、はたしてこの世界にあるだろうか。そして、どうやらそんなものはないらしいと、結論したのさ。つまり、これもやっぱり三十までだよ。三十にもなりゃ、こっちで嫌気がさすだろうからね、そんな気がするんだ」
「俺が泣くのは絶望からじゃなく、自分の流した涙によって幸福になるからにすぎないんだよ。自分の感動に酔うわけだ」