剣客商売 〜十六

全部読んじゃった! 十六巻読んでるときはもったいないもったいないと思いながら読んでました。でも止められない。「ないしょないしょ」も読んだので現在「黒白」。
大体この物語を構成するファクターは以下の点だと思うのだが
 
(1)こころづけ
(2)飛鳥のごとく〜 怪鳥のごとく〜
(3)余人の投げた○○ではない
(4)退屈
(5)老い
 
1はどっかのあとがきにもあった通り、江戸的なダンディズムを表現するために欠かせない。浅野(だっけ?)さんから遺産を引き継いだ後はひたすら渡します。やはり、金は偉大なわけです。金にゆとりがある人間ほど心にゆとりができるというもの。いや、作らねばならぬというもの。武士の時代から金の時代への過渡期でもあり、武家社会打倒の象徴としての位置づけもあります。金がこんなに素敵だった時代もあったんですね。23はとにかく出てくる描写。剣客とはいえその立ち回りがいつもじりじりとした睨み合いじゃあ華がない。とにかく身軽に飛んで三次元的なアクションが繰り広げられる。これも読者が退屈しない一つの要因かと。しかし本当によく投げる。4は5とも絡むのですが、現代で言うと歳を取るとどうしてもやはり俗、というかワイドショー的要素に興味がいってしまう。それが「未来」が目指すべきものでなく迎えるべきものになった時の自然な姿として描かれる。大仰に考えることはないのです。そしてシリーズ序盤は明るかったこの物語も、後半は影が差すようになります。老いです。作者と共に衰える小兵衛にはひたすらに哀愁が漂います。次々と周囲の人々が先立っていき……。死とか老いとかをほとんど意識しない、意識できなくなったこの社会で、今後このようなものをどのように受け入れるべきか、考えさせられます。
あとは料理がとにかく旨そうとか色々あるのですが、とにかく面白くて時代を生きる人のエネルギーに満ちていてどこか寂しい素晴らしい作品としか言いようがございません。
よーしもっと年取ったら蕎麦屋で酒飲むぞー!